ハイリハイリフレ背後霊過去ログ221〜230 |
230.エクトプラズム | 2003.09.26 |
昔、「恐怖の心霊写真集」(中岡俊哉著、二見書房、昭和49年初版)という本が小学生たちの間で大変はやった。心霊写真とは、簡単にいえば「幽霊が写った写真」のことである。プライバシー保護のためか、写っている本物の人間の目の上には黒い線が引いてある。古い白黒写真というだけでも怖いのに、目の上に線、さらに画面の中に丸が描いてあってその中には不気味な「霊」の顔が写っているのだから、小学生たちの恐怖は大変なものであった。
私の小学校でも、軍艦の写真集などとともにこの本が学級文庫に置かれていた。おそらく誰かが持ってきて置いたものだろう。「主砲」「玉砕」「特攻」などという言葉とともに、我々は
「物質化した霊体」
「地縛霊」
「浮遊霊」
などという、学校では教えてくれない言葉をしこたま覚えこんだ。
そんな言葉の中に、
「エクトプラズム」
という言葉もあった。エクトプラズムとは何か詳しく調べはじめると、エーテル体が云々アストラル体が云々といったよくわからない話になるらしいが、よくわからない。私たちは、写真に写った
「霊媒の鼻から噴き出すふわふわしたもの」
「人の顔には見えないが、なんだかふわふわした白いもの」
のことをエクトプラズムというと思っていた。(実際には人の形のエクトプラズムや黒いエクトプラズムもあるらしい。)
エクトプラズムのことで特に有名なのが、次の話であろう。(「恐怖の心霊写真集」より引用)
彼らはまた、霊魂には一定の重量があって、その重さは35グラムであると発表している。
このグループは、一九六六年の秋、巨額の私財を投じて、現代科学で考えられている最高の「霊魂測量」の設備をつくり、約百人の死者の測定を行った。その結果、人間が死ぬ場合、その身体から抜け出ていく水分やガスなどすべてを合計しても、どうしても足りない重さが35グラムあることを明らかにした。
彼らは、これがエクトプラズム、すなわち霊魂と呼ばれるものであって、このエクトプラズムは、肉体の死とともにその肉体から大気中に抜けだし、ふだんは微粒子化した状態で大気中にあり、ときとして現実の姿になるのであり、これがいわゆる霊魂というものであると指摘している。
この伝説が事実であるかどうか私は知らない。しかし、異様に人をわくわくさせる「何か」を持った話なのはたしかである。
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大学で、あるレポートを書くために調べ物をしていた私は、「インド学大事典」という本の中で次のような話を見つけた。
仏教のパーリ語聖典「パーヤーシスッタンタ」は、唯物論的主張を行うコーサラ国セータヴィヤーの王パーヤーシと尊者クマーラ・カッサパの問答を伝えている。それによると、王は次のような主張をした。
「来世は存在しない。化生(けしょう)の有情(うじょう)は存在しない。善悪業の果報は存在しない」
(注)「化生の有情」というのは、天人のように「どこかから湧いて生まれる」生き物のこと。ちなみに、鳥は「卵生」、人間は「胎生」である。
理由は、以下のようなものであった。
この理由一つ一つに対し、カッサパは反論を行ったが、それは次のようなものであった。
パーヤーシはこれらの説明に納得して仏教に帰依した。
お前地獄とか天国のことなんで知ってんねんとか、夢を見るのと死ぬのは違うだろうとか、木と人は違うだろうとか、即座に突っ込みがいくつも入れられてしまうような反論であるが、納得したというのだから納得したのだろう。
さて、この「盗人を釜ゆで」云々の話を読んでエクトプラズムの実験を思い出した私は、さらにいろいろ調べてみた。そこで、出展は忘れたが、やはり2000年ほど前のインドの王様の話で、次のようなものを見つけた。
「盗人を壺の中に入れて密閉して火にかけて殺し、生きているときと重さを比べたが違いがなかった」
残念ながら35グラム云々という話は出てこなかった。
【字数指定なし】
229.田中角栄を殺すために記す | 2003.09.23 |
友人が神戸で変な家の写真を撮ってきたといって、私にくれた。「バッテリー 中古車 車検修理 板金塗装」というビニール製の屋根があるから、どうやら板金屋らしいのだが、どうもおかしい。閉じたシャッターは緑色をしていて、そこにものすごく大きな白い字で
田中角栄を殺すために記す
人類を啓蒙する手段として
発行サン書店発売有文
と書かれている。さらに異様なのは、家の前面がすべて白い看板になっていて(看板の途中が切り取って窓が開けられるようにしてある)、「耳なし芳一」のようにそこにぎっしりと文字が書かれているのである。
総ての人の生命を平等に尊重することが出来,総
ての人が自分を本当に愛することが出来る構造の,
神・天意・自然法・人間性に叛く天皇や天皇的な権
力者がいない,全人類が一台の自動車の如く組織さ
れ,分裂・抗争・対立・競合が完全に絶える真に民
主的・文化的・倫理的・衛生的・経済的・科学的・
平和・自由・幸福な新世界を,一日も早く実現さ
せる,誠の大義・善・公利・公欲を追求する目的
の手段として,無知・狂気・迷信・抗争・偏見・独
断・妄想・錯覚・不経済・分裂・対立・搾取・悪
無責任・の象徴である,天皇裕仁にパチンコを撃
ち・天皇一家のポルノビラを撒き十名の判事・検事
の顔に小便と唾をかけて罵倒し,見たことがない名
古屋の松井不朽先生から二百万円を頂き,東京拘置
所の独房の中から,参議院議員(全国区)選挙に立
候補し,自費で再び立候補する決心を固め,自民党
員の神戸市市会議員である,××××と××××を
収賄罪で告発した,殺人・暴行・ワイセツ図画頒布
前科三犯の奥崎謙三は,天与の生命がある限り,誠
の大義・善・公利・公欲を追求し,何千万年たって
も色があせない(判読不能)をすることを誓います。
(一部伏字とした)
「田中角栄が私を殺す」と主張する人もいれば「田中角栄を殺す」と主張する人もいる。弱肉強食である。(参考:161.田中角栄が私を殺す)
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後に、この家が映画「ゆきゆきて、神軍」で有名な奥崎謙三の家であり、看板に書かれていた「田中角栄を殺すために記す」はその著書の名前だったことがわかった。
他の著書としては、「ヤマザキ、天皇を撃て!」「宇宙人の聖書?」「ゆきゆきて神軍の思想」といったものがある。いくつか読んでみたが、文章が全部上のような調子で、読んでいられなかった。
「ゆきゆきて、神軍」では本人が、元上官の家に上がりこんで暴れたりする様子が映っていて、やっぱり何がなんだかわからなかった。どうやら戦争責任を追求するために戦っているらしいことはわかったのだが、その論理や行動が理解不能なのであった。他の人はどう思ったのかな、と思ってインターネットで検索すると
「戦争はいけない」
「戦争そのものについて考えさせられる映画」
「平和ボケした若者たちにこそ見てほしい」
といった意見がたくさん載っていた。そんな立派な映画だったのか。
ちなみに、奥崎氏は後に「神様の愛い奴」という映画の中で企画ものAVに出演したりしている。
【字数指定なし】
228.アーグググググググ | 2003.09.22 |
小学生ぐらいの頃、大人にあこがれて新聞を読んでいたことがあった。新聞には当時「社会戯評」という風刺漫画が載っていた。首相の顔に「首相」、庶民の顔に「庶民」と書いてあるような親切な漫画だ。私はこの漫画を見てもちっとも面白くなかったのだが、これが面白いと思えないと大人ではないと考え、
「笑わなきゃ、笑わなきゃ」
といつもがんばっていた。この手の漫画が本当につまらないものだったのだと断言できるようになったのは、それからずいぶんたってからだ。
同じようなものに、コンピュータ関係の「ジョーク」がある。マイクロソフト社のビルゲイツ会長ことをわざわざ「某M$社のウィリアムさん」と呼び、サーバが止まることを「お亡くなりになる」と称し、256番を「キリ番」(キリのいい番号)と感じるという、独特のセンスが必要なものだ。昔コンピュータに興味はあるが全然知らなかった頃、
「きっとパソコンに詳しくなれば笑えるようになるんだ」
と思ったものだったが、風刺漫画と同様、まだそうなれるようにはなっていない。むしろ、そういう発言を喜んでする人を見るほうが面白いことに気づき、今はそうするようになった。
さて、「ハッカーズ大事典」(アスキー)という本がある。アメリカの「この手」の人たちの用語をたくさん集めたものである。友人が買って、新品のまま私のところに置いていったのだが、どうしても10ページ以上読むことができないすごい本だ。きっと世の中のハッカーといわれる人々はこの本を読んでげらげら笑うことができる人々なのであろう。
紹介しようにも、「ハッカーズ大事典」はあまりにもヘビーなので、もうすこしわかりやすいものを挙げることにする。以下は、「エキスパートCプログラミング」(アスキー)という本の中の文章のいくつかである。アメリカのハッカー独特のセンスを感じ取ってほしい。
アーグググググググ!アーグブイ!アーグシー!(注)
ビンゴ!
ブドウアメを作る人間はいない。いくらカリフォルニア人がイカレててもね。
ハッカーへの道は、実に険しい!
注:ところでアーグブイ・アーグシーというのはmain関数の引数としてみんなのおなじみだろう……int argc, char *argv[] ってやつさ!このくそいまいましい引数……なにしろこいつはいまだに頭痛の種なんだ、ね、Arindam!……を持って、みんな地獄に行っちまえ!!
【字数指定なし】
227.時計 | 2003.09.20 |
高校の国語の授業では、作品の解釈を生徒に書かせてそれを印刷し、発表をさせる、というのがいつものパターンだった。インターネットがなかったころでもあり、自分の書いたものが印刷されるというのは興奮する出来事だった。ある者は文章の上から2文字目をたどっていくと恥ずかしい文章が現れるように工夫したし(参考:189.竹取物語)私は萩原朔太郎の「時計」という詩の解釈と称してこんなプリントを作成した。
「時計」 萩原朔太郎
古いさびしい空家の中で 椅子が茫然として居るではないか。 その上に腰をかけて 編物をしてゐる娘もなく 煖爐に坐る黒猫の姿も見えない 白いがらんどうの家の中で 私は物悲しい夢を見ながら 古風な柱時計のほどけて行く 錆びたぜんまいの響を聽いた。 じぼ・あん・じやん! じぼ・あん・じやん! 古いさびしい空家の中で 昔の戀人の寫眞を見てゐた。 どこにも思ひ出す記憶がなく 洋燈(らんぷ)の黄色い光の影で かなしい情熱だけが漂つてゐた。 私は椅子の上にまどろみながら 遠い人氣のない廊下の向うを 幽靈のやうにほごれてくる 柱時計の錆びついた響を聽いた。 じぼ・あん・じやん! じぼ・あん・じやん!
古いさびしい空家の中で 椅子が茫然として居るではないか。これは、迷いの世界にある凡夫が三界をひとりさまようさまをあらわしている。「空家」は実に空である世界を、「茫然とした椅子」はもろもろのまよいのうちにあってそのことに気づかない衆生(しゅじょう)をあらわしている。
その上に腰をかけて 編物をしてゐる娘もなく 煖爐に坐る黒猫の姿も見えない凡夫は仏の教えを知らず、一切は空であるという理を知らずもろもろの事物に執着する。「娘もなく、黒猫も見えない」というのは一切は空であることのたとえである。維摩居士が文殊菩薩がやって来るのを知って家の中を空っぽにしておいた、あのノリであると思えばいいだろう。(中略)
白いがらんどうの家の中で 私は物悲しい夢を見ながら「白いがらんどうの家の中」はさきほど説明したとおり「一切空」をあらわす。その中での「物悲しい夢」とは「我(アートマン)」が存在するという考えにほかならない。
古風な柱時計のほどけて行く 錆びたぜんまいの響を聽いた。「錆び」は業(カルマ)をあらわす。「ぜんまい」は輪廻の象徴。迷いの世界に沈みながら、業を積んでゆき輪廻からのがれることができない。
…と、ここまでは顕教の教えである。
詩にいう。
真言というものは不思議である
本尊を観想しながら唱えれば、根源的な無知の闇は除かれる
わずか一字のうちに千の道理が含まれ
それによって、この身のままに、真理をさとることができる(「般若心経秘鍵」)
じぼ・あん・じやん! じぼ・あん・じやん!これこそが不可思議な真言なのである。この真言のあらわすところをすべて説こうとしても、とても説きつくすことはできない。
詩にいう。
真言陀羅尼は一文字に、あらゆる文字を含みもち、一つの意味にすべての意味を具える
一つの法の中に一切の法を忍持し、一つの声に、すべての霊験をまとめて持する
声時と人と法と実相とは、文・義・忍・呪の、それぞれの本体であるから
おのおのがいずれも総持の名を具えている(「般若心経秘鍵」)(以下長々と続くが省略)
別に怒られることもなく、これが印刷されてしまったので、私は発表をしなければならなくなってしまった。
※「般若心経秘鍵」:筑摩書房の「弘法大師空海全集」から引用
【字数指定なし】
226.弥生人の声 | 2003.09.18 |
私が小学生の頃、学習研究社の「6年の学習」の付録で、「歴史人物コンピュータボイス」というのがあった。肖像画や遺骨から、コンピュータで昔の有名人の声を復元しました、というテープである。聖徳太子・紫式部・源頼朝・織田信長・豊臣秀吉・徳川家康・坂本竜馬・福沢諭吉・夏目漱石・北京原人・縄文人・弥生人・モナリザの声が収録されている。(参考:193.紫式部)
まだ1980年代で、「コンピュータ」という言葉に最新鋭の夢の技術!!のにおいがあった頃の話である。コンピュータを使っている、というだけでありがたがられた時代だ。観光地にはよく「コンピューター占い」などというものがあったが、今思うと電卓に毛の生えたような機械だった。そんな時代のものだから、復元した音声もかなり怪しげなものであった。中でも、私のいた小学校で一番人気だったのは「弥生人の声」である。
私たちが縄文人と違うところは、なによりも大地を耕し、米を作っていることだろうね。
また、米を作るための、スキやクワなどの道具を持っていることだ。
私たちの住む世界にはいろいろな精霊がいる。私たちはそれらをあがめている。お祭もやる。
今年の秋は、米がたくさん取れたので、今日はその祭だ。
考えてみると「縄文人の声」「弥生人の声」というのもひどい話である。その辺のアメリカ人をつかまえて喋らせ「これがアメリカ人の声です」と言っているようなものだ。たしかに嘘はついていないのだが。
【字数指定なし】
【参考】弥生人の声、北京原人の声、紫式部の声(協力:武内さん、quzさん)
225.人を選ぶ女 | 2003.09.16 |
電車の中に、ちょっと「アレ」な感じの若い女がいた。女は、ナンパのつもりか、近くにいる若い男に端から順に声をかけていた。
「なー、どっから来たーん?」
男たちは、むげに扱うのもどうかと思ったのか、「大阪」などと適当に返事をしていた。そのうち、次は若い男ではなくおっさんの番になった。おっさんにも声をかけるのかな、と思って見ていると、結局かけなかった。どうやら「アレ」な人には「アレ」な人なりの好みがあるらしい。
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通り魔事件で、捕まった犯人たちはよく
「誰でもよかった」
などということを口にするが、実際には女子供や老人といった自分より弱そうな人間を襲うなど、かなり人を選んでいる。しかし、2003年の7月に起こった事件では違った。
K―1選手の須藤元気さんも刺される…渋谷の通り魔(読売新聞)
夜の東京・渋谷で短時間に、男性5人が、刃物を持った男に次々と切りつけられた。24日深夜、若者やサラリーマンの人通りが絶えないJR渋谷駅近くで起きた連続通り魔事件。現場近くの住民たちは、「恐ろしい」と表情を硬くした。
最初の被害者が出た現場は、飲食店街の一角の路地裏にあるコンビニエンスストアの前だ。刺された男性の中にはK―1選手の須藤元気さん(25)もいた。(以下略)
[読売新聞社:07月25日 02時18分]
「K―1選手」というのは、つまり格闘家である。本当に人を選ばない通り魔もいるんだ、と印象深かった。
【字数指定なし】
224.北の国から | 2003.09.15 |
富山出身の友人がいる。彼の地元に廃病院があり、心霊スポットと言われていた。そこで昔少女が二人行方不明になったことがあった。原因はいろいろ噂されたが、よくわからなかった。
2002年に北朝鮮の金正日総書記は、スパイにより日本人を拉致していたことを公式に認めた。その頃から、「北朝鮮のスパイによる日本人拉致事件」について報道がおおっぴらになされるようになった。そして、行方不明になった日本人のうち、北朝鮮による拉致の被害者である可能性が高いとされる人々の名簿を警察も公にした。その中に、その病院で行方不明になった少女二人も載っていた。
隣町の海岸でも、以前スパイによる拉致未遂事件が発生したことがあったので、この説は地元ではかなり信じられている。もっとも、本当のところはどうなのかはわからない。
【字数指定なし】
223.野たれ死ぬよりはましだ | 2003.09.14 |
1996年ごろ、眠れないので深夜にラジオを聞いていたことがあった。当時私は京都に住んでいたのだが、そのあたりは韓国の電波の干渉が多くてなかなか聞こえる局がみつからない。つまみをぐるぐる回しているうち、鮮明な日本語の放送が入ったので聞き始めたのだが、どうもおかしい。
「次に、ホッカンと中国国境における人身売買についてお伝えします」
ホッカンというのが「北韓」(北朝鮮のこと)のことであることを理解するまでにしばらく時間がかかった。
ニュースは北韓関係のさまざまなことに及んだ。印象深かったのは、ピョンヤンの老人ホームについてのニュースだった。
「この老人ホームですが、老人たちも、野たれ死ぬよりはましだ、と、仕方なく入っているという状況です」
真面目な声のアナウンサーが「野たれ死ぬ」などという言葉を発するのを聞いて興奮してしまった。
「これで、『統一への道』を終わります」
その後はわからない言葉の放送になった。韓国のプロパガンダ放送だったらしい。
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222.みんみん皆のミンナミン | 2003.09.13 |
「オロナミンC」という飲み物がある。茶色いガラスビンに入った黄色い炭酸飲料水で、パチモン(にせものの意)が各社から出ている。味のみならず容器やラベルの色使いまでそっくりの、間違えて買わせるのが目的としか思えないようなものが多い。
Yさんは、この「オロナミンC」のパチモンを集めるのが趣味で、「ボンヌC」「ミンナミンC」といったものを買っては飲んだり保存したりしていた。「ミンナミンC」の箱には
「みんみん皆のミンナミン」
という味のあるコピーが書いてあり、こういった「お茶目」なところもパチモン収集の魅力なのだった。
さて、ある時Yさんは「オリゴミンC」という商品もあるということを知った。それを作っている会社の電話番号を調べて電話をし、欲しい旨連絡したところ、小分けの場合50本単位でしか注文は受け付けていない、とのことであった。受付の女性は
「よく欲しいという方から連絡があるんですよ」
と言っていたので、Yさんのような人は多いらしい。結局50本買った。50本送料込みで3000円台だったらしいのでかなり安い。会社に持っていくと
「わーすごいそっくりー」
と、なかなか好評だったそうだ。
こういう話をあらかじめ聞いていたので、私はYさんとはじめて会ったとき、土産として「梅仁丹ドリンク」というものを持っていった。「梅仁丹ドリンク」は、仁丹社が出していた梅仁丹の味の炭酸飲料で、パチモンというわけではないが、やはり「オロナミンC」タイプの茶色いビンに入っていて外見が似ていたからである。Yさんは「梅仁丹ドリンク」を手に取ると言った。
「このビンの模様は縄文式なのでミンナミンと同じですね」
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221.イヤイヤ | 2003.09.12 |
T君がいた中学校に、「イヤイヤ」が口癖のケータという男がいた。何を話すときもまず「イヤイヤ」というので、そこで会話が終わってしまうのだった。それが面白くて、皆ケータに声をかけた。
「おうケータ元気か?」
「イヤイヤ!」
「お前この問題わかるのか?」
「イヤイヤ!」
ケータはま四角の顔に大きな耳で、いつも笑った顔をしていた。かくかくした動きで、足の裏を全部つけて歩き、急にまぶしそうな顔で空を見たり、急にこっちを向いて笑ったりした。
このような行動から快活な人間なのかと思われていたのだが、そうでもなく、ある先生が当てられた数学の問題ができないケータに対して
「おいケータ、こんな問題もできんのか?」
と軽くいったところ、突然ケータは激昂して
「なんや俺が悪いんかい!!」
などと怒鳴り始めた。こういうことが続いたので、先生たちはケータを気味悪がってあまり当てなくなった。
このケータが幼少の頃から思いを寄せつづけている女の子がいた。このような表現をすると美しいが、ケータの行動は美しくなかった。毎日その子の家の前で待ち伏せし、家から出てきたところを見計らって
「イヤイヤ、偶然やな!!」
と近寄ってくるのだった。これが毎日続けた。ある日、いきなり手をつかんで離したかと思うと、走り去っていった。そして、
「イヤイヤ、今日は手をつないで歩くところまでいった!!」
とまわりの者たちに言ってまわった。T君たちが、あの子がケータと、おかしいなあ、などということを話していると、「あの子」本人がそれを聞きつけて怒った。それまではケータの普段の生活はよくわからなかったのだが、本人の言葉により、いつも待ち伏せしていて、手を触って逃げていったなどというケータの行状が明らかになった。
【字数指定なし】