ハイリハイリフレ背後霊過去ログ181〜190




190.ブッチャー大流血 2003.08.06

兵庫県に、「阪急西宮スタジアム」(西宮球場)という施設がある。もともと阪急ブレーブス(現オリックスブルーウエーブ)というプロ野球の球団のホームグラウンドだったのだが、球団が身売りしたので、競輪やコンサートなどのイベント会場になった。当時高校生だった私たちは近所の学習塾に通っていた。そこからはスタジアムがよく見えたし、コンサートのときは歌声が聞こえてきた。

平成三年(1991年)の夏、ここにサザンオールスターズという人気歌手グループが来てコンサートを開いたことがあった。Nとその仲間たちは、なんとかしてただでもぐり込めないかと考え、頭を絞った。

「(スタジアムの)職員が使う入り口からなら忍び込めるかもしれない」

誰かが言い出した。そこで物は試しと、Nらは昼の間に侵入を試みてみた。

あっさりと侵入は成功した。中は、ちょうど舞台設営の最中だった。様子を伺っているうちに、スタッフがこちらを見ているような気がした。

「見つかった!」

Nは思い込み、逃げ出した。そして、観覧席の急な階段を、上から一気に飛び下りようとした。ところで、彼は忘れていたのだが、階段の天井は大きな段々のような形をしている。天井の角で額を割り、Nは床に昏倒した。本人はというと、何が起こったのかわからなかったらしい。

塾に帰ってきた彼は、プロレスラーのブッチャーのように額から大流血していた。塾の事務所で手当てをしてもらったのだが、怪我をした理由を彼は「転びました」と説明した。

夜コンサートが始まってから、彼らは改めて球場への侵入を試み、まんまと成功した。

【字数指定なし】

189.竹取物語 2003.08.06

昔、古文の授業で作品の一部を現代語訳してこい、という課題があった。当たった者は紙に書いて提出し、先生はそのコピーを他の生徒に配って授業を進める。竹取物語の一部が当たったOという男は、こんなプリントを提出した。一見つまらないギャグをおりまぜたただの作文に見えるが、実は重大な秘密が隠されている。当時(一回目の湾岸戦争のころ)のことだから原稿は手書きである。


  帝が仰せられる、「宮造麻呂の家は山の麓に近いと聞いてい
るの。御狩りの行幸をするように装って、かぐや姫を見てし
まおうか。」と仰せになる。宮造麻呂が申し上げることには、「
おちゃ〜、それはすばらしい。いやあ、なあに、かぐや姫が、
ぼんやりしております時に、突然おいでになって、御覧にな
ごぽっ(咳)あっ、失礼、ご覧になられたら、自然にご覧になれる
のに違いありません。」と奏上するので、帝は急に日をお決め
になられて、御狩りにお出ましになり、かぐや姫の家に、お
でかけになられ、家にお入りあそばしてご覧になると、一面
にむちゃ苦茶光り輝いて美しい姿ですわっている人がある。
あら、これがかぐや姫であろうとお思いになって、逃げて入
るかぐや姫の袖をおつかまえになると、姫は顔を袖でおおい
包んでおそばにいるが、帝は初めてご覧になったので、比類
なく美しいとお思いになり、「もう放さないよ。」と言って連れ
去ろうとすると、かぐや姫が答えて奏上する。「私の身は、も
しうまれがこの国でありましたら、お召使いにもなれましょ
うが、そうではありませんから、連れていらっしゃることは
たいそうむずかしゅうございます。」と奏上する。帝は、「え
っとんでもない。どうしてそんなにむずかしいことがあろう。
なおやっぱり連れていこう。」とおっしゃって、御輿を近くに
みしっとお寄せになると、かぐや姫は、ぱあっというまに、
かげになってしまった。帝は、かいもなく、残念だ、とお思
いになり、なるほど普通の人間ではなかったのだな、と思い
たちになり、「それでは、御供に連れて行くのはやめよう。し
きゅうもとの姿におもどりなさい。せめて、その姿を見て帰
ろう。」と仰せられたところ、かぐや姫はもとの姿になった。
姫をすばらしいとお思いになる気持ちを、帝は、やはり、制
止してしまうことが出来ない。こういうふうにして、姫を見
せてくれた宮造麻呂のてがらをおほめになる。その宮造麻呂
はあの帝にお仕えしている百官の人々に対し、たいそうもの
すんごい饗応をしてさしあげる。帝はかぐや姫を家に残すの
をざんねんむねんとお思いになられたが、魂を残したような
かんじがしてお帰りになった。御輿にお乗りになってから、
歌をかぐや姫に、
  いった帰り道の行幸は、どうしても心が進まない気がして
心のこりである。これも私にそむいてあとに、かぐや姫が、
残ったせいだよ。
  たいして姫は御返事を、
雑草の生い茂る賤しい家に長年暮らしてきたこの私が、ど
うして今更宮仕えをして玉の台のような御殿で暮らすことを
考えましょうか。

ヒントは「ごぽっ(咳)」である。

【字数指定なし】

188.一言でいえば 2003.08.05

「一言でいえば」という遊びがある。映画の内容を一言でまとめてしまうのだ。たとえばこのようになる。

私の考えでは、一言で説明できる映画はいい映画である。小難しい話は苦手だ。例えば、私は「スターウォーズエピソード1」があまり好きではないのだが、理由は「一言でまとめられないから」である。確かこんな話だった。

「カエル星人がギャーギャーわめくので、潜水艇で水の底に潜ると大きな魚に食われそうになるが、もっと大きい魚がそいつを食ってくれて助かる。田舎の村で少年を拾い、レースに出させたら勝つ。赤鬼が長い棒を振り回しながら襲ってくるが、なんとかやっつける。なにやら経済がどうたら複雑な事情から戦争になる。さっきの少年が悪戯で宇宙船のボタンをおしたら勝手に発進して敵の母艦をあっさり爆発させてラッキー。カエル星人たちが花火をあげて大はしゃぎ」

実にややこしい。これに対して、最初の「スターウォーズ」はこんな話だ。

「白いロボットと金色のロボットと毛むくじゃらの獣人と影の薄い若者と濃い顔の中年男が、黒いおっさんから囚われの美姫を救い出す話」

なんというわかりやすさであろうか。ややこしい話なら高級だと思っている人には猛省を促したい。バルス!

【字数指定なし】

187.ベルサイユのばら 2003.08.04

私がいた予備校に、ものすごく太った男がいた。彼はいつも食堂で、カツカレー2皿を食いながら「ベルサイユのばら」という漫画を読んでいた。彼の鞄の中には、いつも「ベルサイユのばら」愛蔵版が二冊と雑誌「格闘技通信」が入っているのが見えた。

ある時、誰かがすれちがおうとして彼の肩に接触した。すると彼はサッとファイティングポーズをとった。また、彼が一人でエレベーターに乗っていたとき、ドアが閉まる前に乗り込もうと人々が走って行くと、カチカチと大急ぎで「閉」のボタンを押した。しかし、手を挟まれてしまったのでやむなく「開」を押した。

親切なところもあった。受付でペンを探していると、「うう」と言って貸してくれたらしい。礼を言うと「うう」と言って去ったという。

決して喋らない男なので誰も正体を知らなかったが、五浪らしいなどと皆勝手に言っていた。

【字数指定なし】

186.振り向けば奴がいる 2003.08.03

私は高校卒業後、浪人として一年間予備校で過ごした。予備校は何だか変なところで、高校でも大学でもない独特の雰囲気の場所だった。たとえばこんなことがあった。私のクラスのある男がこちらのほうに、ものすごくうれしそうな顔で近寄ってきた。そして、すごい大発見!!という風情で、笑いを必死でこらえながら言った。

「なーなー、桃ってケツに似てるなー」

まるで小学生だ。なお、一応断っておくと、ケツというのは標準語で尻のことである。

------

「ヤツ」と呼ばれる男がいた。彼は、この予備校の生徒なのかさえ、どうもはっきりしなかったのだが、いつも教室の窓から授業を覗いていた。ある時、誰かと「ヤツ」の視線があった。すると「ヤツ」はサッと走り去った。その日、廊下の壁のポスターには、女性器をあらわすマーク(地図記号の「工場」や「灯台」、あるいは「桑名市」のマークにも似ている)がマジックでなぐり書きされていた。またある時、今度は先生と視線があった。先生は「中で受けたらええのに」と言った。すると、「ヤツ」はサッと走り去った。今度は階段のすべての階の壁に「マーク」がマジックでなぐり書きされていた。

「ヤツ」は時々授業にでていたが、いつも授業が始まってから入ってき、終わる前に出ていった。いつものように「ヤツ」は倫理の授業が終わる前にでていったが、その時先生は「あんなやつは地獄に落ちればいい」と言った。「ヤツ」はサッと走り去った。

授業後、エレベーターに乗った人々は驚愕した。ドアが閉まると、直径1メートルの「マーク」がそこに完成したのである!きっと「ヤツ」が怒ったに違いない、と人々は恐れた。

【参考】その手は桑名のホームページ http://www.city.kuwana.mie.jp/

【字数指定なし】

185.ネオンサイン 2003.08.02

ソ連がロシアに変わるか変わらないかという頃の話である。兵庫県の、阪急西宮北口駅近くのビルの屋上に、日立製作所という会社の巨大なネオンサインがあった。私たちは夕方いつそれが点灯するかを見たく、毎日そのネオンサインを眺めて、いざ点灯すると歓声をあげて拍手をした。しかし、Yという男はいつも惜しいところで見逃していた。ある日Yは

「今日こそは見る」

と宣言して15分ちかくネオンサインを見つめつづけたが、点灯はしなかった。「ああつかないな」と思って首を下におろし、見上げてみると、ネオンサインはすでに点灯していた。

Yは地団駄を踏んでくやしがった。

【字数指定なし】

184.宇宙人 2003.08.01

2000年7月22日、友人たちに用事があったので、JR京都駅からバスに乗った。そのバスに乗っていた女子高生二人組が「宇宙人怖い」という話を大声でしていた。おっ、と思って聞いていたら、こんな話だった。宇宙人は、草むしりをさせられたとき、

「草だって生きてるのに、どうしてむしられなきゃいけないんですか…」

というようなことを誰にいうともなくつぶやいていた。そして、地面のまつぼっくりを拾い上げ

「まつぼっくり、ころころ…」

ともつぶやいていた。どうやら宇宙人というのは、そいつらのクラスメイトのあだ名だったらしい。女子高生たちはひとしきり喋ってから

「宇宙人怖いー!!」

と声を合わせて叫んだ。

------

T君の高校時代の友人も、宇宙人に違いないといわれていた。落ち着きのない男で、じっとしていることができなかった。教師に「じっとしてろ」と言われるとちょっと止まるが、すぐにまたそわそわと動き出す。

宇宙人は国語など、文系の学問は全然駄目だったが…何を書いているか読んでもさっぱりわからないのだそうだ…数学や物理などは非常によくできた。特に星について詳しく、会話の中に普通に「M何とか星雲」という言葉が出てくるあたり、ますますもって怪しいとささやかれれていた。

T君がラーメン屋でアルバイトしていたとき、宇宙人が店に来たことがあった。店長をまじえて喋っていて、誰それが離婚して云々、という話になった。すると、宇宙人はこんなことを言い出した。

「『りこん』ってなんですか?」

二十歳すぎにもかかわらず、宇宙人は「離婚」や「配偶者」という言葉自体を知らなかったのだった。あきれるT君や店長に対して、宇宙人は逆切れした。

「そんな言葉知ってなきゃいかんのか!?」

しばらく話していたが、あまりにも宇宙人が人間離れしたことばかり言うので、店長もさじを投げた。

「もうええわ、お前、星に帰れ」

すると宇宙人はむっとした調子で答えた。

「僕は地球生まれですよ!!」

宇宙人には不思議な能力がいろいろあった。高校ではバスケット部にいたのだが、なぜかシュートのときは下を向いてボールを投げ、しかもそれが入る。本人によると、下の線を見ていたら場所はわかる、ゴールを見ていたらかえって気が散って入らないのだ、という。また、すごい地獄耳の持ち主でもあった。宇宙人の噂話をしていると30メートルぐらい離れたところでそれを聞いていて

「誰が宇宙人だって!?」

と詰め寄ってくるのだった。

互いの都合もあって、T君はその後、宇宙人とあまり会わなくなった。そんな頃T君はラーメン屋の店長と、久しぶりに宇宙人の話をしていた。T君が家に帰ると、これまた久しぶりに宇宙人からEメールがきていた。

「お前最近俺の悪口言ってへんか?」

なぜわかったんだろうと、T君は不思議がった。

【字数指定なし】

183.成功 2003.07.31

私は蚊の真似をするのが得意だ。正確には、蚊が耳元を飛ぶときの「プーン」という音を口で出すのが得意だ。私の周りではこの技はもう有名になってしまい面白みが減ったので、人ごみの中などでこっそりやっている。周りの人が「あー!!」などと言いながら耳元の何かを払うようなしぐさをしたら「成功」である。

以前ある工場で働いていたとき、一人で車で出かけることがよくあった。車の中では、軍歌やパキスタンのポップスのテープを聴いていた。退屈なので、いたずらをよくやった。信号で赤で止まると、音量を最大にして歩道側の窓を開ける。通行人が「ん?」という顔をしたら「成功」である。通行人がこちらに気づく前に、私は音量を下げて走り去ってしまう。後には不思議な顔をした人が残されることになる。

【字数指定なし】

182.塔 2003.07.30

京都タワーはキッチュの巣窟だ。タワーが作られた時代のまま、時が止まっているのである。エレベータの中の変なイントネーションの観光案内(「どすえ」などという言葉は、ほかで聞いたことがない!)。入り口で出迎えてくれる舞妓ロボット、暗い部屋にあり入るといきなり動き出す鬼のロボット、竹取の翁のロボット…(なぜいちいちロボットにする必要がある?)。メダルに名前を刻む機械、100円で覗ける望遠鏡、からくり人形おみくじ、相性占いマシン。まるっきり「ポートピア81」の時代…いや、もっと前かもしれない…とかわらないものがここにはあった。

東京タワーやポートタワーと、タワーは各地にあるが、どれもこれも変なものの溜まり場である。考えてみれば、タワーは空に向いた袋小路だ。本当の袋小路と同じく、風通しの良いところなら流れていってしまうような「ごみ」がたまっていくのだと思う。

2002年の2月、友人たちと韓国の釜山に行った。ここには釜山タワーというタワーがあり、高いところが好きな我々も登ってみた。高さは京都タワーぐらいなのだが、土台が高いところにあるので非常に見晴しがよかった。このタワーも京都タワーと同じくキッチュなもので溢れていた。例えばジジイの形をした手相占いマシン(しかし胴体のテレビ画面には萌え系ギャルのイラストが出てきて脱力する)とか、覗くと「とってもおもしろい立体写真」が見られる機械などである。立体写真のタイトルは日本語でも書いてあったのだが、こんな感じだった。

「北朝鮮の人々の生活」

「民族の誇り白頭山」

「夢にまで見た金剛山」

500ウォンと安かったので(ちなみに、当時ラーメンが2000ウォンぐらいだった)「北朝鮮の人々の生活」を覗いてみた。なにやら悲壮な音楽とナレーションが聞こえはじめ、ばあさんがキムチをつけていたりする貧しい農家の生活風景が写し出された。最後のほうにボロボロの子供達が集まって焼き芋を食べているシーンが写し出されたが、彼らの服は確かに破れめだらけだが布自体はきれいだったので、おそらくモデルを使っているにちがいないと推察された。ボロボロの服で貧乏を表現するのが、コントのようでおかしかった。

【字数指定なし】

181.おどるポンポコリン 2003.07.29

1998年の三月、台湾の台北に行った。台湾には、変な日本語がたくさんあった。「ください」は「くだちい」だし、安室奈美恵という歌手のCDには「おがままを許しこ」「ハートに火をっけこ」といった得体の知れない曲ばかりが入っていた。

いろいろ見て歩いた結果、次のような文字が間違えられやすいことがわかった。

確認はしていないが、「ソニン」という歌手など、おそらくかなり間違えられていることだろう。

さて、「おどるポンポコリン」という歌があった。人気アニメ「ちびまる子ちゃん」の主題歌で、一時期はどこでもこの歌が流れていた。「ちびまる子ちゃん」は外国でも人気があるらしく、各国で放送されていた(いる)。当時の台北でも「ちびまる子ちゃん」は人気があり、日本アニメの歌のCDやテープを売っているのを見るとたいてい「おどるポンポコリン」が含まれていた。

しかし、日本語表記がどれもこれも間違っている。「おどるポンコリニ」「おどるポニポコリソ」「おどるポソコソニ」など、一つとして正しく表記されているものがなかった。どうやら、台湾の人にとって「おどるポンポコリン」を間違わずに書くのは至難の業らしいのである。

ちなみに「おどるポンポコリン」について、「ン」・「ソ」・「リ」・「ニ」・最後の文字を忘れる、の、すべての組み合わせを列挙するとこうなる。

おどるポンポコン・おどるポンポコンン・おどるポンポコンソ・おどるポンポコンリ・おどるポンポコソ・おどるポンポコソン・おどるポンポコソソ・おどるポンポコソリ・おどるポンポコリ・おどるポンポコリン・おどるポンポコリソ・おどるポンポコリリ・おどるポソポコン・おどるポソポコンン・おどるポソポコンソ・おどるポソポコンリ・おどるポソポコソ・おどるポソポコソン・おどるポソポコソソ・おどるポソポコソリ・おどるポソポコリ・おどるポソポコリン・おどるポソポコリソ・おどるポソポコリリ・おどるポリポコン・おどるポリポコンン・おどるポリポコンソ・おどるポリポコンリ・おどるポリポコソ・おどるポリポコソン・おどるポリポコソソ・おどるポリポコソリ・おどるポリポコリ・おどるポリポコリン・おどるポリポコリソ・おどるポリポコリリ。

このうち、少なくとも10種類ぐらいは見たように思う。

【参考】ぢぬんをぐろぐろ http://occhonji.tripod.co.jp/guroguro/index.htm

【字数指定なし】

もどる トップ