ハイリハイリフレ背後霊過去ログ251〜260 |
260.カラテカ | 2004.01.18 |
大学にいた頃の話である。春、クラブ勧誘のビラを配っていたところ、メガネをかけた白人女が近寄ってきた。女は我々に銅色のメダルを見せびらかした。どうやら、自分が以前空手のチャンピオンになったことを自慢しているらしかった。そんなことをいきなり言われても、我々には「ああそうですか」としか答えられなかった。
その日はそれで済んだのだが、しばらくしてから女は空手着を着て体育館の武道場周辺をうろうろするようになった。見学かな、と思っていたのだが、どうやらそうではなく、ただうろうろしていただけらしい。変わった人だなとは思ったが、そのまま放っていた。
その頃、柔道場を使っていた合気道部で、盗難事件が頻発した。合気道部では、貴重品は柔道場に持ってきて、部屋の端の方に並べておくのを常としていた。ところが、この貴重品がなくなるのである。おかしなことがあるものだ、と警戒を強めていた。
そしてついに犯人がつかまった。犯人は例の空手着の女であった。女は後ろの入口から並べてある財布を持っていっていたらしい。同じような格好をしているし、顔を知らない新入生が多い季節でもあるから、なかなか気がつかなかったのだ。もともとこの女が怪しいとは思われてはいたのだが、現行犯で捕まえるためにわざと「泳がせる」など、合気道部ではかなり苦労したそうだ。
女はそれ以来体育館では見かけなくなったが、学校ではたまに見かけた。
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259.歌うインド人 | 2004.01.12 |
私がいた中学で、昔「インド人の歌」というのがはやった。私自身は聞いたことがないのだが、私より一つ上の学年の人が作った歌で、
「インドで〜うまれた〜インドじ〜ん」
というような歌詞だったそうだ。当時いた人々に聞いても誰も覚えていなかったので、いまだにどんな曲だったのかわからない。
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昔インドに行ったとき、同行の武田という男はクリシュナなんとか、という俳優に似ていたらしく、やたらと現地のおっさんたちにもてていた。彼らは我々に「ジギジギ」という謎の言葉や、当時の流行歌を教えてくれたりした。
「パリデシ パリデシ ジャナーナヒ」
と武田が歌うと、おっさんたちはとてもうれしそうに笑っていた。あまり何回も歌わされるので私までその歌を覚えてしまったほどである。
インドではいろいろなところで歌が聞こえた。祈りの声も我々には歌にしか聞こえなかったし、テレビやラジオでも妙に色っぽい声の男女が歌っているのがいつも聞こえていた。
アグラからバラナシまでは夜行列車で移動したのだが、そのときも歌うおやじがいた。まだ夜明け前だというのにおやじは絶好調で、同行の男と機嫌よく喋りちらし、しまいには歌まで歌いはじめた。我々はさすがインドだ。インド人は朝から歌うのか、などと感心していたのだが、近くに寝ていたほかのインド人はうるさそうにしていた。どうやらただの迷惑なおやじだったらしい。
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258.ナルシス | 2004.01.09 |
ホテルで大物芸能人T・H氏(男)の部屋に呼ばれた後輩の○○氏(男)は
「ああ、俺もとうとうTさんに抱かれるのか」
と覚悟を決めて部屋に入った。すると、裸で鏡の前に立っているT・H氏がいた。T・H氏は鏡のほうを向いたまま○○氏に話しかけてきた。
「○○」
「……。はい!!」
「俺って、美しいかい?」
「はい、美しいです!」
「そうか。じゃあ、帰っていいぞ」
「……??」
出展:忘れた
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OLの「S」という人がいる。彼女は、昔「大神源太みたいな人」とつきあっていたらしい。見た感じは似ていないのだが、雰囲気が似ているのだという。具体的にはどういうことなのかよくわからないが
「俺って美しいだろう?」
などということをしょっちゅう言われて閉口したらしい。結局別れたのだが、その後も彼は年賀状を送ってきた。それも、自分の写真を年賀状にしたものを十枚送ってきたのだそうだ。
彼女は昔から不思議な男に好かれるたちであった。まだ「ストーカー」という言葉はなかった頃だが、男につけまわされたことがあった。会社から出てくると待っていたりするのだ。気持ち悪いな、と思っていたのだが、特に害もないので放っていた。
ある日、彼女が会社から帰ろうと思って出てきたところ、雨が降っていた。いやだなあと思っていたところ、例の男が無言で傘を差し出してきた。雨にぬれなくてすんでラッキーだったそうだ。なんだか「使い魔」みたいである。
(注)大神源太とは、巨額詐欺事件で有名になった「ジー・オーグループ」の元名誉会長である。2002年に逮捕された。集めた金で自分が主演のアクション映画を撮ったり、スケスケTシャツや上半身裸で流し目を送る自分の画像の特大ポスターを会員に送るなど、気になるところの多い人であった。
(大神源太についてGoogleで調べる:http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&oe=UTF-8&q=%E5%A4%A7%E7%A5%9E%E6%BA%90%E5%A4%AA)
私は「燃え盛る炎の輪の中で七支刀を振りかざす大神会長」の写真がお気に入りである。例の映画の一シーンらしい。どんな映画だったのか、一度見てみたいものだ。
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257.エデンの園 | 2004.01.04 |
Yさんが中学生の頃、数人で友達の家に遊びに行ったことがあった。居間でゲームなどして遊んでいたのだが、部屋中に裸の男女がたわむれているイラストのポスターがべたべた貼ってあるのでなんだか違和感があったらしい。男女は草で作ったような服?を身にまとっていて、まわりには動物たちがいっしょに遊んでいる。
Yさんは違和感は感じつつも、他の友人たちがポスターについては何も触れないので、自分も黙っていたそうだ。
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256.Mr.フリーズの逆襲 | 2004.01.02 |
私の友人が、どこかの学校の入学説明会の手伝いのアルバイトをしていたことがあった。その時、来た人の中で、会場の入口の階段で立ち止まってしまってどうしてもそこから動こうとしない男がいた。何らかの恐怖に襲われたのか、動くことができないらしい。これは明らかに病気なのでしかたがない。話しかけるとよけいに固まってしまうので、しかたなくそのまま自然に動くのを待っていた。
やがて説明会が終わって、ぞろぞろと中にいた人が出てきたのだが、彼はその波の中で何をすることもできず立ち往生していた。
人がすっかりいなくなっても、彼はまだそこに立っていた。友人は見かねて、近くに行って話しかけた。できるかぎりやさしく話しはしたらしい。
「もう終わったし、急がんでいいから、そろそろ帰ってや」
しかし、男はそちらを向こうとさえせず、そのままじっと固まっていた。
しばらくたって、いよいよ時間が遅くなってきたので、友人はその学校の若い女の職員のところに行って事情を話した。その職員はやって来て、固まっている男に二言、三言話しかけた。
すると、男はするすると動いて職員の後ろからついて帰っていった。アレな人もそれなりにえり好みはするらしいのであった。その様子を見ていた友人は「どういうことやねん!!」と言って憤った。
後に、友人はその男に「Mr.フリーズ」というあだ名をつけた。
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255.お兄ちゃん | 2003.12.31 |
「お兄ちゃん」
という言葉には何かがあると思う。友人が行っている学校で以前、独特なイントネーションの標準語で「Kanon」というゲームについて熱く語る男がいた。
「ちっがうんすよ!あれは、なっきゲー(泣きゲー。泣けるゲームの意)なんっすヨ!!」
彼は福島出身なのだが、インターネットで北海道の人が
「何度泣かされたことか・・・」
という表現を使ってほめていたし、私も似たような人を見たことがあるので、おそらく全国に同じような喋り方の人がいるのだろう。たぶんアメリカにもいる。人種とか国籍とは違う人間の分類の仕方がある、というのが私の考えである。ちなみにこのゲームは私も試しにやってみたが、唐突に「タイヤキを盗んだ女」が出てきたりして全く話に共感できなかった。
とにかく、この男が授業中、夢中でシューティングゲームかなにかをやっていたことがあって、その時発した言葉が
「お兄ちゃん、助けて!!」
だったのが非常に印象的だったということだ。
それとは別に、非常に気になる人物がいて、「右手法の人」などと呼ばれていた。いつも落ち着きなく校舎内をうろうろしていて、あちこちにぶつかっては方向転換していたので、まるで「右手法」で迷路を解いているように見えたからである。
彼は授業中もそわそわしたり急にうれしそうになって奇声を発したりしていたのだが、覗いてみると、インターネットでエロサイトを見ているのだった。イラストなのはまだしも、縛っていたり脱糞していたりするあたりがマニアックである。というよりも、そういうことはこっそりすることだと思うのだが、そうしないところが彼の奥深いところだ。
彼がガチャガチャとなにやらキーボードを激しく叩いていたことがあって、何を打っているのか気になって見てみたところ、どうやらチャットをしていたらしい。文字列の中にチラッと
「お兄ちゃん」
という言葉が見えたそうだ。
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254.目が細い人 | 2003.12.30 |
まるで庭石をひっくりかえしたときのようにわらわらとっ……!!
漫画「GOD SAVE THE すげこまくん!」より
彦根のT君から聞いた話である。
T君の学校にいたその男は、もともとは周りの者と話もする普通の男だったらしい。ところが、学年が進むと、彼は誰とも口をきかなくなった。「ああ」「うん」程度のことさえ口にしない。とにかく何ひとつ口をきかないのである。
また、彼は常に大きなスポーツバッグを携帯していたのだが、絶対にこれを身から離すことがなくなった。なぜかはよくわからない。便所に行くとか、そういったときでも絶対に鞄を肩にかけて行くのである。
この鞄には何が入っているのかは大きな謎とされていた。鞄から何かを取り出すときに覗こうとしても、決して見えないようにしていたからだ。ある時狭いドアから彼が出て行くとき、この鞄が大きく振れてドアにぶつかった。その時近くにいた者の証言によると
「ゴツッ、と重い音がした」
という。結局何が入っていたのかはわからなかったそうだ。
また、彼は人がいない場所を好む習性があった。暗い教室があって、誰もいないのかなと思って入ると彼がこちらを向いて黙って座っていて驚く、ということがたびたびあった。その部屋に入っていくと、彼は立ち上がって入れ違いに出て行く。便所にもかならず一人で入った。別の者が入ってくるとすぐに入れ違いに出て行くのだった。
目が悪い人が目を細めて遠くを見る、ということがよくあるが、彼はいつもそのような目をしていた。別に遠くを見ているわけではないのだが、常に目を細めていた。もともとはちゃんと目が開いていたらしいのだが、だんだんそうなったらしい。あんなので本当に前が見えているのだろうか、ということがよく議論された。
ある教室で授業があったとき、彼はいつもどおりしかめっ面で、大きな荷物をゆらしながらうつむき加減でゆっくりと歩いてきた。その教室は建て増しのときの都合から、通路の途中に補強のための鉄の柱が立っている。あっ柱……と思ったときにはすでに遅く、彼は頭から突っ込んだ。
「ゴーン」という音がした。議論は、やはり見えていなかったらしい、という結論になった。
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253.城崎にて | 2003.12.29 |
1994年の年末、私たちは電車で山陰方面に旅行に出かけた。まず鳥取砂丘に行き、その後城崎で温泉に入ってのんびり過ごそうという算段である。
朝5時ごろに集合すると、空に異様に大きな白い星があるのが見えた。「なんだあれは?UFOか?」「いや木星では」と議論したが、天文に詳しい者が誰もいなかったので結論は出なかった。その後太陽が出て明るくなってきても、まだ白く光っていた。(最近になって、ソフトで「1994年12月22日5時ごろ京都から南東を見上げたとき」をシミュレートしてみたところ、金星がそのあたりにあった。)
鳥取につくと、なんだか人が少なくて静かな町だなという印象だった。コンビニの店員も終始無言だった。砂丘に行ってみると、他に誰もおらず、ひろびろとして気持ちがよかった。私たちは相撲を取ったり、坂を下って波打ち際に行き、海に触って遊んだりした。途中、私はハングル文字でサイダーと書いてある緑色のペットボトルを見つけた。ペットボトルには中身が入っていて、開けると「プシュー」というサイダーの気が抜ける音がした。ためしにちょっとなめてみると確かにサイダーの味がした。
夕方城崎に向かい、安っぽい旅館に泊まった。旅館では4人で3つしか布団が支給されなかったので、いろいろ組み合わせを工夫した。
温泉に入ってからぶらぶらその辺りを歩いていると、こういう場所特有のうさんくさい横丁があり、そこに
「ヌード ゴールド」
という怪しすぎる看板があった。看板の前でババアが我々に向かって手招きした。
「お兄さん、ヌードは?」
我々はちょっとうろたえたが、いや結構、というようなことを言って立ち去った。後日、その店に入ったことがある人から聞いたところによると、出演は店の前のあのババア自身らしい。入らなくてよかったというものである。
次の日は一日中寝たり温泉に入ったりしてぶらぶら過ごした。夜になって、また我々は散歩に出た。売店でポテトチップスを買おうとすると、値段は普通なら150円ぐらいのところが、消費税3パーセントを入れて412円もした。高いなあ、などとつぶやいていると、おやじは言った。
「ここは大阪と違うからねえ。ルートがないんだ。商品が入ってこないんだよ。しかもうちは深夜営業だからねえ」
特急が止まる駅にルートがないはずはなかろう。私はじゃあいいです、と言って去ろうとした。するとおやじはうしろから罵声を浴びせてきた。
「値段見てから買え!ボケ!!」
帰ってから自動販売機で買ったビールを飲んだ。気が抜けていてまずかったので製造年月日を見ると、2年前の日付が書いてあった。
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252.猫が行方不明 | 2003.12.28 |
昔パソコン(初代iMac)を買ったとき、おまけで「ポストペット」というソフトがついてきた。ポストペットというのは、色々なキャラクターがメールを運んでくれるというものである。キャラクターたちは普段は自分のパソコン上で生活していて、餌をやったり殴ったりして反応を見て遊ぶことができる。また、同じソフトを使っている人のところにそれらのキャラクターはお使いに行くことができる。
なんだかよくわからなかったが、とりあえず猫のキャラクターを飼ってみた。名前はその頃働いていた工場でよく聞いた単語から取って「ノルマルヘキサン」にした。しばらくノルマルヘキサンに餌をやったり殴ったりしてみたが、ノルマルヘキサンは画面をうろうろしているだけで別に面白くない。それでお使いにやってみることにした。
ポストペットを使っている知り合いが思いつかなかったので、とりあえず実験的に自分から自分あてにメールを出してみた。「送信」ボタンを押すと、ノルマルヘキサンはドアを開けてひょこひょこと出て行った。
おそらく初期設定の何かが間違っていたのだろう、ノルマルヘキサンはそれきり帰ってこなかった。
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友人から聞いた話である。彼の通っていた学校に、ちょっと気になる人物がいた。「うまく表現できないが、なんだか変わっている」のだという。具体的には、急に笑顔になったり何かをつぶやいたりするらしい。しかし、直接自分たちになにか被害があるわけでもないので、皆放っていた。
しかし、皆は気がつかなかった……例によって「なかったこと」にしていたのかもしれないが……彼の中には水がたまりにたまった風船のような「何か」があったのだろう。ある日、それがついに破裂するときが来た。パソコンの授業のとき、彼は
「どん、どん」
と拳で机を叩き始めた。はじめは皆パソコンの調子が悪いので叩いているのだろう、ぐらいに思って気にもとめていなかった。しかし、音はいつまでも続いた。
「どん、どん、どん、どん、どん」
先生は話を止め、それまでざわざわしていた教室は静かになり、皆がそちらの方を向いた。そこには机を叩きつづける彼の姿があった。先生は彼の方に近寄って尋ねた。
「大丈夫か?」
「いや、ぜんぜん大丈夫っすよ」
彼は答えたが、手は言葉とは無関係に動きつづけた。先生は彼を連れて教室から出て行った。
それ以来、彼の姿を見たものはいない。
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251.化身 | 2003.12.21 |
バービー人形という着せ替え人形のおもちゃがある。私はなんとなくバービーは金髪の白人だと思いこんでいたのだが、実は黒人のバービーというのもある。白人・黒人だけでなく、その他にも様々な人種や時代のバービーがあるらしい。おもちゃ屋で本物を見るまで知らなかった。私が子供の頃は白いのしかなかったように思うのだが、気がつかないところで大繁殖していたようだ。
店に展示してある人形で、いろんな民族衣装バービーが並べてあるところがあり、その中で南アフリカのバービーを発見した。そのバービーは髪の毛が黒くちりちりしていて、肌の色も黒かった。もはや共通点は「三白眼できれいな格好をした若い女」ということだけである。同じ名前の別人かと思ったが、全部同じ人物らしい。発売されてから何十年も年を取らないのも怪しい。
バービーはいろんな時代、いろんな場所にいろんな姿で現われるらしいのだ。きっとどこか遠くにあるバービーの「イデア」が、現世で顕現するのであろう。
「ああ、菩薩みたいなもんやな。ほら、観音様とか」
私がつぶやくと、一緒にいた女性は意味がわからない、という顔つきをしていた。
ちなみにバービーの恋人の「ケン」には、そんなにいろんな種類はないようだ。
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