ハイリハイリフレ背後霊過去ログ101〜110 |
110.丸いパンが嫌いな女 | 2003.05.15 |
へそが嫌いな女がいる。「へそ」という言葉を聞いたり、へそが写った写真を見たりしただけで怖気をふるうのだという。
「へそなんか自分にもついてるだろう」
と言われて、彼女はこう答えたという。
「あまり考えないようにしてます」
彼女の嫌いな食べ物は「丸いパン」である。ハンバーガー用のパンの、つるっとした表面を見ると吐きそうになるという。味が嫌いなのか、というとそういうわけでもない。四角いパンやハンバーグ単品なら食べられるからだ。ハンバーガーのパンは上下で二つに分かれているが、下のほうのつるっとしていない方は食べられるらしい。
考えてみれば、蛇だのミミズだのウナギだの、長い動物が嫌いな人がいるのだから、丸いパンが嫌いな人もいるかもしれない。ちなみに、ホットドッグは好物だという話だ。
【字数指定なし】
109.カレーを食う男 | 2003.05.14 |
行列のできる店にカレーを食いに行った。休みで人が多かったためかずいぶん待たされて、ようやく入ったら相席でよろしいですかと言われた。行ってみると
「あっ!!」
と言いたくなるような危険な香りに満ちた男が座っていた。そいつは一人で、変な上目づかいでこっちをちらちら見た。そして、思ったとおりなんとなく
「ねちょっ」
とした声で話しかけてきた。
「わし70分待ってんけどけっこう待ったぁー?」
適当に受け流してあとは目が合わないようにしていた。男は卵をスプーンの先だけでくちゅくちゅとかきまわしていた。そして、やっぱりスプーンの先だけでぴちゃぴちゃとカレーを食べていた。時々そちらのほうを見ると、男は頭を低くして変な上目づかいでこちらをうかがっていた。
【字数指定なし】
108.裸になって森へ帰れ | 2003.05.12 |
U君たちが仲間内で
「だから男ってのは不倫だのなんだの欲望のままになるところってあるよな」
という話をしていたところ、その発言のどこが癇にさわったのか知らないが、T君というのが突然アニメの登場人物のような、訳のわからないことを言い出した。
「そんなやつは服を脱いで裸になれ。そして森へ帰れ!!」
どうやら、そんな風に本能のままに生きるぐらいなら人間やめろ、と言いたかったらしいのだが、発言が唐突だったのでみんなびっくりした。
それ以来、T君は「アシタカ」と呼ばれるようになり、「森へ帰れ」という言葉がはやった。
(注)アシタカ:アニメ「もののけ姫」の主人公の名前
【字数指定なし】
107.野人の歌 | 2003.05.11 |
「『さわやかさ』が足らない」
私が書いたものを読んで、Nは言う。
「ポエム書いてください、さわやかなん。宿題です。タイトルは『野人』で!」
「『やじんのうたが きこえてくるよ ンガー ンガー ンガー…』」
「そんなんじゃなく、ちゃんと!」
そういうわけで、いくつか作ってみた。
------
野人についてお おくの本が書かれ たが、ほとんどは いいかげんな噂や でたらめだ。まじ めな記事はほとん ど見られない。だ が古代生物を追う 研究者や収集家が 神農架を調べるう ちに、この場所が 希少な動物のデー タを集める絶好の 場所であることは わかった。そこで …………
初めてこの野人を見たときは毛ヅヤも悪く元気もなかった。しかし最近では毛は手入れされたように綺麗で、時々シャンプーの香りまでした。
それなのに首輪をしていなかったり、時々どこを通ってきたのか、ある意味白野人にでもなったように、ほこりで真っ白だったり。それに以前に僕以外の人を見ると、怖がるように僕にすり寄ってくる。
「なんだかなぁ・・・」
僕はもう一度つぶやいた。
僕がそんなことを考えているとき一人の女の子が近づいてきた。
黒野人は突然その子を見ると駆け寄っていった。
その子には見覚えがあった。確か僕の隣のクラスの人だ。その女の子は肩まで伸びた髪を一つにまとめていた。
「こんにちは」
黒野人を抱き上げで彼女が声をかけてきた。
「こんにちは。この野人、君ん家の野人なの?」
僕は訪ねた。彼女は少し考えながら
「うん、一応ね。最近うちで面倒見始めたんだけどね、私にしか、なついてくれなくてね。それに、なんだかいつも同じ時間になると居なくなっちゃうし・・・」
彼女は抱き上げた黒野人と遊びながらそう言った。
「ふーん。それで後を付けてきたら、」
「君が居た。っていうわけ」
彼女は僕の後に続いた。そして会話は続く。
「でも、この子が人になつくなんて珍しいね。いっつも怖がってるはずなのに・・・」
彼女が不思議そうに言った。
(注:大部分 http://users.kyoto-kcg.ac.jp/~sousaku/sakuhin/clover2/4-1.html の盗作)
------
Nは鉛筆を手に、しばらく「森にかくれている野人」と格闘していたが、やがて言った。
「もう降参や。答教えてくれ」
「まだ作ってない」
「なにー!?」
そして、ポエムを作る話はうやむやになった。
【字数指定なし】
【参考】
「中国『野人』騒動記」中根研一 大修館書店
106.みんなでしあわせになるところ | 2003.05.10 |
「今度の日曜日空いてる?」
Yさんは会社の同僚に尋ねられた。
「Yが好きな人間ウォッチングができるんやけど来てくれへん?」
何だか怪しいのでYさんは困り、いろいろ理由をつけて断ろうとしたのだが、とうとう説き伏せられるようにして連れて行かれてしまった。それは
「親孝行をして幸せになろう」
という新興宗教の団体の集会だった。
行ってみると大勢の人たちがいて、「まー可愛い」とか「いやーこんなきれいな人が来てくれてうれしいっす」などといってもてはやされ、それは悪い気分ではなかったそうだ。
さて、集会でYさんはその人たちの
「親孝行をして大学に合格した!」
とか
「親孝行をして飛びこみ営業が成功した!」
などといったという話を聞かされた。まあ、親孝行は悪いことではない。しかし、その親孝行の内容が
「毎朝、親と握手をする」
「弁当箱に『ありがとう』と書いた紙を入れる」
「毎晩、親におやすみのキスをする」
といった気持ちの悪いものだったので、彼女はどうしてもその人たちになじむことができなかった。
あとで聞くと、彼らは「青年部」であり、他にもう少し年齢がいった人・既に両親が亡くなって親孝行のしようがない人たちのためのグループもあるという。それは
「夫婦仲良くして幸せになろう」
という団体らしい。
【字数指定なし】
105.足のきれいな女 | 2003.05.09 |
Yさんから聞いた話である。
Yさんの働いている会社の同僚が、地下鉄で男に愛の告白をされたらしい。
「前から思ってたんですけど、きれいな足ですね。僕、足がきれいな人が大好きなんです!僕とつきあってください」
ここまではいい。しかし、その後がいけなかった。
「僕はね、足さえきれいだったらそれでいいんですよ!顔とか体つきなんかはほんまにどうでもいいんです!!」
そして、彼女が大国町という駅で降りようとすると、男は言った。
「偶然ですねー!僕もちょうどこの駅までだったんですよ」
そして改札口で男は乗り越し精算をはじめた。
「なにが『ちょうどこの駅』やねん!」
そう思いつつ、彼女はその間に改札を出て家に帰った。
【字数指定なし】
104.史上空前のニンジャ映画ブーム | 2003.05.08 |
「世界の支配者は本当にユダヤか」
こういうタイトルの本があるらしい。「本当に」も何も、「世界の支配者はユダヤだ」などと思ってる人はほとんどいない(少しはいるかもしれない)と思うのだが。
さて、「ニンジャ映画」というものがある。以下は、私が説明のために昔書いた文章からの引用である。
ニンジャ映画とは、主にアメリカおよび香港・台湾資本によって製作された、黒・白・赤等のニンジャ装束に身を包んだ外人達が暴れ回るアクション映画のことである。1980年代に濫作された。日本のいわゆる「忍者映画」とは全く別物である。ゆめゆめ混同してはならない。
「こういうものは、全部見なければいけない」
そう思って、友人と一緒にずいぶんたくさんのニンジャ映画を見たのだが、ほとんどが起きているのがやっとのひどい作品ばかりだった。自分たちだけがこのようなつらい目にあうのも癪なので、他の者にも見せるために煽り文句を考えた。
史上空前の『ニンジャ映画』ブームに乗り遅れるな!!
今、なぜ若者たちの間で『ニンジャ映画』がブームなのか?
冷静に考えるとニンジャ映画はちっともブームにはなっていないのだから、そもそも質問自体が成り立たないのだが、真剣な顔で聞かれたらこんなふうに答えてしまいそうである。
「うーん、インターネット世代特有のゲーム感覚で現実と仮想のなんとかじゃないでしょうか」------
この話をすると皆笑う。そのくせ、雑誌などで
キレる少年たち 今、なぜ少年犯罪が激増しているのか
などというタイトルの記事を見ても、それは変だと思わないらしい。おかしな話である。資料がないから正確なことは書けないが、おそらく戦国時代のほうがよっぽど少年犯罪は多かっただろう。
【字数指定なし】
103.ああやっぱりな | 2003.05.07 |
京都に三条という繁華街がある。そこにある大きな本屋に寄ったとき、レジの前にちょっと動きの怪しい女がいたので気になっていた。メガネがずれていて、目を見開いて何かぶつくさ言っている、若いのか年が行っているのかわからない女だった。
様子をうかがっていると、女はレジの横に置いてある漫画「銀河鉄道999」のイラストが描いてあるはがきを取ろうとして落としてしまった。そして、
「うわああああ!!」
とすごい声をあげた。
ああ、やっぱりな、と思った。
【字数指定なし】
102.ピンク色の帽子の女 | 2003.05.06 |
先日、大阪にAという絵描きのライブショーを見に行った。先着50名のみということだったので朝早くに行ったのだが、人は来ているのに誰も並んでいない。なぜだろうと思ったら、「ここに並んでください」と書いてある場所に
「あっ!」
という感じの男がいた。
男はその場所で存在しない携帯電話をかけたり、踊ったり歌ったりしていた。そのうち彼に気づかないでそこに並んでしまった人がいたのだが、熱狂的ファンらしいその男にずっと話し掛けられつづけて困っていた。
男がしばらく中座したので、そのすきに人々は並んだ。やがて戻ってきた男は後ろのほうに並んだ。整理券が配られるのを待っていると、向こうからピンク色の麦わら帽子をかぶった「これは」という女が走ってきた。女は行列の横を走りながら、並んでいる一人一人を指差して
「いっちにーいさーんしーいごーおろーくしっちはっちきゅうじゅっじゅっちじゅっにじゅっさじゅっしじゅうごにんめー!!」
と叫び、行列の後ろに加わった。彼女はさっきの男と意気投合したのか、その後ずっと一緒にいた。
【字数指定なし】
101.そうかもしれないね | 2003.05.05 |
昔大学のタテカン(立て看板、大字報のこと)でこういう内容のものがあった。
S学部長Kの「学生は飼い犬」発言許すな!
どういう内容だったかは忘れたが、その頃団体交渉があったらしい。そこでS学部の学部長と学生の間で悶着があり、学部長が
「飼い犬に手をかまれた気分だ」
と漏らした。それを聞きとがめた学生が
「学生は学校の飼い犬なのか?」
と問いただしたところ、学部長は
「そうかもしれないね」
と答えた、というのであった。
それからしばらく一部の学生の間で、「そうかもしれないね」という言葉を使うのがはやった。
【字数指定なし】