ロボット相撲レポート原稿
2002.01.15更新
平成14年月日
情報工学科 不死川魔沙王・桑原翔(制御通信部)
本研究の目的は、マイコン応用システムを利用した自立ロボット「相撲ロボット」の製作を通して、電気・電子・論理回路、マイクロコンピュータといったものへの理解を深め、電子工作およびアセンブラ言語プログラミング技能の向上を図ることである。
研究題材として相撲ロボットを選んだ理由は、
○コンピュータ・センサ・アクチュエータの諸部分の総合であり、メカトロニクス技術の基礎を体系的に学ぶことができる。
○全国に初心者からベテランまでの愛好家が数多くおり、入門しやすい。また、ハードウエア・ソフトウエアともに適度に難解で奥が深い。
○競技化されており、はっきりした目標にむけて努力することができる。相手がいる競技なので面白く参加することができる。
というものである。
今回は、メカトロゼミナール学生作品の相手として4輪タイプの作成を行った。12月末から1月中旬までの間に設計から完成・デバッグまでを行わねばならないという非常にタイトなスケジュールのため、作業時間を節約するため設計に十分時間をかけ、車体製作とプログラミングと基板製作を同時進行で行った。今回の作品を手直しして夏の公式大会に臨む予定である。
2.相撲ロボット大会とは
全日本ロボット相撲大会のホームページ(http://www.fsi.co.jp/sumo/)によると「相撲ロボット大会」とは、
「試合者双方が試合規則に従って、定められた土俵内において試合者が独自に製作したロボットを用いて互いに決まり手を競い、審判員の判定により勝敗を決めるもの」
とされている。競技としてはラジコン型の部・自立型の部の2種あるが、今回は自立型のものである。
研究場所 | 制御通信部部室(洛北校F教室裏) |
作成者 | 桑原翔(機械設計・工作)不死川魔沙王(電子設計・工作・Z80プログラミング) |
マシン名 | CINCS2002(仮) |
車体 | アルミニウムを使用。ホームセンターで購入した2mm厚のL字型・ロ型の棒を用い、フレームをねじ止めにより作成。3mm板を床面およびブレードに使用。ブレード先端部はリン青銅薄板を砥石で研いだものを使用。吸着には吸引ポンプではなく強力な希土類磁石を2個使用した。車輪および基板が外に露出しないようシールド内にすべてが収まるようにした。 |
車輪 |
今回はパワーに優れた4輪タイプの作成を行った。 車輪には田宮の模型用ホイール・タイヤを使用し、上に両面テープで粘性の高いゴムシート(田宮RDタイヤキャップラバー(ソフト)OP-184)を貼り付けた。 |
CPU | AKI80を使用。I/O拡張には8255ではなく、74244と74138を使用してスペースを節約した。CPU・センサ・モータの制御回路はすべて一枚の基板に収めた。激しい動きに耐えるため、基板にはパーツがはがれにくいガラスエポキシ製両面基板を用いた。 |
アクチュエータ |
四輪駆動とし、モータに直接車輪を固定する方法を取った。モータにはパワーのあるDCギヤードモータ四つを使用し、モータ回転の制御用素子としてTA7257を四つ用いた。 DCモータ:日本サーボDME34B37G30A |
センサ |
赤外線センサを使用し、超音波センサは使わなかった。 土俵センサ:オムロンEE-SF5×4(反射型フォトインタラプタ、一体型) 索敵センサ:オムロンE3R-DS30E4(反射型フォトインタラプタ、一体型) |
電源 |
モータ 充電式ニッカド電池14.4V(タミヤ7.2V組電池2セット) CPU・センサ 充電式ニッカド電池6V(単3型×5本)Panasonic P-3NPS 1.2V 700mAh |
プログラム開発 | DOS/V機上のエディタ(SE3を使用)でコーディングを行い、アセンブルとリンクを行った。プログラムのテストはAKI80基板上のRAMにHEXファイルを転送することによって行った。転送にはRS232Cケーブルの一端をステレオジャックに付け替えたものを用いた。経費および基板上の場所の節約のため、転送用のクロックにオシレータを用いずCTC3を使っている。 |
※大きさ:19.9cm×19cm×グラム(試合前計測のときの値)
4.開発スケジュール
1月 | 車体の設計・材料の切断・穴あけ・車体ねじ止め・電子回路設計・CPU回路製作・モータ制御回路製作・床センサテストおよび製作・索敵センサテストおよび製作・ブレード製作・全体組み立て・プログラミング・動作テスト・プログラムのROM化・試合出場 |
5.全体の外観
6.各部の詳細
車体
(桑原)
CPU
CPUボード回路図 2002/01/15改定
AKI80
秋月電子通商が販売している「AKI80」は、東芝製8ビットCPU「TMP-Z84C015」を搭載したワンボードマイコンのキットである。TMP-Z84C015は、Z80シリーズのCPU,PIO,SIO,CTC,CGC,ウォッチドッグ&レジスタをワンチップに収めたICであり、Z80アセンブラプログラムを実行させることができる。安価で、小さくまとまっているので今回制御用に採用した。
今回新しい試みとしてCTCをプログラム転送のクロックとして用いている。これにより高価で場所を取るオシレータを使う必要がなくなり、ロボットの軽量化を行うことができた。
センサ
センサ・モータ回路図 2002/01/15改定
相撲ロボットのセンサについて
相撲ロボットは「土俵から出ることなく」、「敵を発見・追尾」して戦うロボットである。そのため、センサは土俵の白線を認識するものと敵の車体を認識するものの二つが必要となる。土俵センサには色を判断するため短距離用の光センサを用いる。索敵センサは光センサ・超音波センサ・接触センサなどが考えられる。
土俵センサ
土俵センサにはマイクロマウス2000・相撲ロボット2001でも使用したオムロンEE-SF5×4の外付けタイプのものを使用した。このセンサは内部に増幅回路を持っており、とくにオペアンプなどの増幅回路をつけなくても1センチぐらいまで黒白の判断をすることができる。また、ねじを通すための穴があいており、外付けをするときに便利である。
索敵センサ
索敵センサにはオムロンE3R-DS30E4を使用した。工場のベルトコンベヤなどで主に使われているセンサで、簡単な回路で30センチぐらいまで確実に物体を検知できる。今回は時間の関係でこれを用いたが、高価なため、時間があればほかの方式を使ったほうがよいと思われる。
モータ
アクチュエータとしては、DCモータを使用した。モータドライブICとして
TA7257を使用し、PWM制御は行わず、常に同じ速さで動作した。曲がるときは片方の車輪を止めて一つの車輪だけ動かすようにした。敵をキャッチしたらスピードアップする仕掛けなどをリレーで作ったら面白いだろう。
7.ソフトウエア
2002年1月15日現在のプログラム(test2002.z80)
アルゴリズムは相撲ロボット2001(竜水)と同じで、以下のとおりである。
(図)
8.対メカトロゼミ戦の顛末
9.問題点と今後の課題
10.参考文献
「Z80マイコン短期マスタ」(横山直隆著、シータスク)
「やさしいマイコン制御ロボットの製作」(横山直隆著、シータスク)
「Z80マイコン応用システム入門ハード編第二版」(東京電機大学出版局)
「モータ制御&メカトロ技術入門」(トランジスタ技術編集部編、CQ出版社)
「勝てるロボコン相撲ロボットの作り方」(浅野健一著、東京電機大学出版局)
「初めて学ぶ電子制御入門早わかり」(新電気編集部、オーム社)
「74シリーズIC規格表」「CMOS規格表」「トランジスタ規格表」等各種規格表(CQ出版社)
ほか
以上