ロボット相撲大会レポート原稿
2001.11.29更新
平成13年月日
情報工学科 r00h0390 不死川魔沙王
本研究の目的は、マイコン応用システムを利用した自立ロボット「相撲ロボット」の製作を通して、電気・電子・論理回路、マイクロコンピュータといったものへの理解を深め、電子工作およびアセンブラ言語プログラミング技能の向上を図ることである。
研究題材として相撲ロボットを選んだ理由は、
○コンピュータ・センサ・アクチュエータの諸部分の総合であり、メカトロニクス技術の基礎を体系的に学ぶことができる。
○全国に初心者からベテランまでの愛好家が数多くおり、入門しやすい。また、ハードウエア・ソフトウエアともに適度に難解で奥が深い。
○競技化されており、はっきりした目標にむけて努力することができる。相手がいる競技なので面白く参加することができる。
というものである。
今回は、特に私自身が今まで詳しくなかった車体製作にも力を入れ、金属工作の技術を身に付けるように努力した。
2.相撲ロボット大会とは
全日本ロボット相撲大会のホームページ(http://www.fsi.co.jp/sumo/)によると「相撲ロボット大会」とは、
「試合者双方が試合規則に従って、定められた土俵内において試合者が独自に製作したロボットを用いて互いに決まり手を競い、審判員の判定により勝敗を決めるもの」
とされている。競技としてはラジコン型の部・自立型の部の2種あるが、今回は自立型の部に参加した。
研究場所 | 制御通信部部室(洛北校F教室裏) |
作成者 | 不死川魔沙王(機械工作・電子工作・Z80プログラミング)・桑原翔(機械工作指導および補助) |
共同研究者 | 西庄一紘 |
協力 | 久保田先生(ろう付け・機械工作・電子工作指導) |
マシン名 | 怪僧竜水 |
名の由来 | 劇画「女犯坊」の主人公の僧の名前から命名。力強いロボットであってほしいと言う願いを込めている。 |
車体 | アルミニウムを使用。ホームセンターで購入した2mm厚のL字型・ロ型の棒を用いた。ねじ止めではなくろう付けして作成した。 |
車輪 |
マイクロマウスで経験済みで制御が容易な2輪型とした。 車輪には田宮の模型用ホイール・タイヤを使用し、上に両面テープで粘性の高いゴムシート(田宮RDタイヤキャップラバー(ソフト)OP-184)を貼り付けた。 |
CPU | AKI80をI/Oの拡張をせずに使用。CPU・センサ・モータの制御回路はすべて一枚の基板に収めた。激しい動きに耐えるため、基板にはパーツがはがれにくいガラスエポキシ製両面基板を用いた。 |
アクチュエータ |
二輪駆動とし、モータに直接車輪を固定する方法を取った。モータにはパワーのあるDCギヤードモータ二つを使用し、モータ回転の制御用素子としてTA7257を二つ用いた。 DCモータ:(8001 タミヤ ギヤードモーター 3633K36) |
センサ |
赤外線センサを使用し、超音波センサは使わなかった。 土俵センサ:オムロンEE-SF5×4(反射型フォトインタラプタ、一体型) 索敵センサ:TLN110(赤外線LED)×4、IS1U60(リモコン用受光ユニット、中心周波数38kHz) |
電源 |
モータ 充電式ニッカド電池12V(単2型×10本)SANYO RC-2400 1.2V 2400mAh CPU・センサ 充電式ニッカド電池6V(単3型×5本)Panasonic P-3NPS 1.2V 700mAh モータ用電池は5本ずつまとめて組み電池とした。組み電池のパッケージングには物干し竿用のチューブ(極太)を使うと安くてきれいに仕上がった。 |
プログラム開発 | DOS/V機上のエディタ(SE3を使用)でコーディングを行い、アセンブルとリンクを行った。プログラムのテストはAKI80基板上のRAMにHEXファイルを転送することによって行った。転送にはRS232Cケーブルの一端をステレオジャックに付け替えたものを用いた。調整後のプログラムはROMライタを用いてROMに載せて試合に臨んだ。 |
※大きさ:20cm×20cm×2660グラム(試合前計測のときの値)
4.開発スケジュール
8月 | 車体の設計・材料の切断・穴あけ・ろう付け・電子回路設計・CPU回路製作・モータ制御回路製作・床センサテストおよび製作 |
9月 | 索敵センサテストおよび製作・ブレード製作・全体組み立て・土俵製作・組み電池作成・プログラミング・動作テスト・上部の覆い製作・プログラムのROM化・大会出場 |
5.全体の外観
6.各部の詳細
車体
車体設計図
設計思想
車体は、まずアルミフレームで大体の形を作り、モータを配置した。フレームの組み立てはねじ止めではなくろう付けによって行った。その後前面に相手の下にもぐりこむための「ブレード」を装着し、最後に全体を覆うシールドを取り付けた。
※ろう付けとは、金属を接着する技法である。母材の金属を熔かさずに蝋材を熔かして金属を接着する。だから、はんだ付けもろう付けの一種であるといえる。今回はアルミ接着用のろうを用い、バーナーで熔かした。燃料としてはカセットコンロ用ガスボンベを用いた。
アルミはろうが付きにくいので表面の酸化膜を取り除く必要がある。
重心は低く、前よりになるように設計した。当初前が重過ぎるため止まりきれず円を飛び出すという現象が起こったが、これは後ろのほうに強力な磁石を配置することによって解決した。磁石の配置ははじめ前の電池の下に固めて置いたが、飛び出すので後ろにも配置した。配置の際プラスチックで作った磁石ボックスがたわんで床に張り付き、まともな走行ができなくなるという現象が生じた。そのためはじめ真中のほうに置いていた磁石を端のほうに移してたわまないようにした。
ボールキャスタではなく「カグスベール」を用いた。この方が簡単で厚さの調整がたやすいからである。また、床を傷つけないという利点もあった。「カグスベール」の中では「トスベール」が一番薄くて使いやすかった。
電池をはんだ付けするときは同軸ケーブルの中に入っている網状の銅線を使うと薄くきれいにできた。
赤外線LEDの光漏れ防止には同軸ケーブルの皮を用いた。しかしあとでぴったりの大きさのアルミパイプがある事を発見した。こちらのほうが確実に光漏れを防止できたと思われる。
CPU
CPUボード回路図
AKI80
秋月電子通商が販売している「AKI80」は、東芝製8ビットCPU「TMP-Z84C015」を搭載したワンボードマイコンのキットである。TMP-Z84C015は、Z80シリーズのCPU,PIO,SIO,CTC,CGC,ウォッチドッグ&レジスタをワンチップに収めたICであり、Z80アセンブラプログラムを実行させることができる。安価で、小さくまとまっているので今回制御用に採用した。
センサ
センサ・モータ回路図
相撲ロボットのセンサについて
相撲ロボットは「土俵から出ることなく」、「敵を発見・追尾」して戦うロボットである。そのため、センサは土俵の白線を認識するものと敵の車体を認識するものの二つが必要となる。土俵センサには色を判断するため短距離用の光センサを用いる。索敵センサは光センサ・超音波センサ・接触センサなどが考えられる。
光反射式センサ(反射式フォトインタラプタ)
反射式フォトインタラプタが壁を検出する方法
反射式フォトインタラプタは発光ダイオードとフォトトランジスタが一つの素子に組み合わされたものである。発光ダイオードが赤外線を発射し、反射光をフォトトランジスタが検出することにより、物体の存在を検知する。
超音波センサ
超音波センサは広い範囲をカバーすることができる。また、反応がアナログ的なので、ADコンバータを使えば相手との距離を測ることもできる。その代わりデジタル式の光センサのように明確な反応ではないので使いづらい。
接触センサ
さまざまなセンサのテストの結果
土俵センサ
土俵センサにはマイクロマウス2000でも使用したオムロンEE-SF5×4の外付けタイプのものを使用した。このセンサは内部に増幅回路を持っており、とくにオペアンプなどの増幅回路をつけなくても1センチぐらいまで黒白の判断をすることができる。また、ねじを通すための穴があいており、外付けをするときに便利である。
索敵センサ
とにかく外乱の対策には頭を悩まされた。リモコン用の受光素子であるため、さまざまな方向からの光を受け取って反応してしまう。外乱対策としては黒く塗ったプラスチックや角型アルミパイプをかぶせ隙間には黒いビニールテープを巻いて前以外は厳重に覆った。また、車体内側も黒く塗り反射による影響を極力排するようにつとめた。
モータ
アクチュエータとしては、DCモータを使用した。モータドライブICとして
TA7257を使用し、PWM制御は行わず、常に同じ速さで動作した。曲がるときは片方の車輪を止めて一つの車輪だけ動かすようにした。敵をキャッチしたらスピードアップする仕掛けなどをリレーで作ったら面白いだろう。
7.ソフトウエア
今大会出場時のプログラム(ryusui3.z80)
アルゴリズムは以下のとおりである。
8.ロボット相撲大会の顛末
残念ながら2回戦(1回戦はシードされていた)で敗退した。
相手は「ロボット相撲愛好会」http://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuwat/frameset2.htmlの「TMR−N5」、前後に鉤爪を備えた吸引型のものである。
まず、1回目はスタートボタンを押すのが早くてフライングとなり、警告(0.5本相当)を受けた。
2回目は正面からぶつかったが、圧倒的なパワー差でそのまま押し出され転落した。
3回目はスピード差を利用して横から回りこみ、真横から突っ込んだが相手に何の影響も与えることができず、そのうち爪で引っ掛けられて落とされた。これで2本先取されて負けとなった。
9.問題点と今後の課題
もともと全体を覆うシールドはないものとして設計したので、あとで取り付けたとき難儀した。CPUボードがはみ出している部分があったためきれいな形にすることができず、頑丈に止めることができなかったからである。これは強度のことを考えてもあまりよいことではなかったので、次はシールドを作ることを設定した上であらかじめ基板を切っておき、このようなことが起こらないようにしたい。なお、試合に出た感想からいうと、シールドはないよりもあったほうがよい。さかさまに墜落したり線に爪を引っ掛けられたりするためである。
電池はオリジナルに組んだ電池を用いたが、将来的なことを考えると一般にラジコン用で流通している7.2ボルトの組電池を用いた設計にしたほうがよかった。
センサは負論理のため、わかりやすくするためわざわざNOT回路を通して入力したが、意味がなかった。ソフト上でCPL命令を行えば済んだ話だからである。
プログラム転送の同期を取るためオシレータを積んだが、これはCPUのCTCを使えば省略することができる。オシレータは高いので、今後はその手段をとることにしたい。
他の出場者のマシンを見ての感想
今後の課題
10.参考文献
「Z80マイコン短期マスタ」(横山直隆著、シータスク)
「やさしいマイコン制御ロボットの製作」(横山直隆著、シータスク)
「Z80マイコン応用システム入門ハード編第二版」(東京電機大学出版局)
「モータ制御&メカトロ技術入門」(トランジスタ技術編集部編、CQ出版社)
「勝てるロボコン相撲ロボットの作り方」(浅野健一著、東京電機大学出版局)
「初めて学ぶ電子制御入門早わかり」(新電気編集部、オーム社)
「74シリーズIC規格表」「CMOS規格表」「トランジスタ規格表」等各種規格表(CQ出版社)
ほか
以上