大韓遠征記

2/19(火)

 青柳も動けるようになったので、この日は三人でソウルタワーに登った。ソウルタワーというのは南山(なむさん)公園の山の上にあるタワーで、ミョンドンからもよく見える。馬鹿と煙は高いところに登りたがるという。そして、ある統計によると全人類の9割は高いところが好きだといわれている(当社比)。我々も例外ではなく高いところが好きである。だから登りに行くことにした。青柳の調子がまだ悪いので、朝食は濃いものではなくロッテリアで済ませることにした。ロッテリアに行くと「キムチバーガー」という独自メニューがあったのでとりあえず頼む。キムチ焼き飯を固めてライスバーガー状にしたもので、間には何かの揚げ物(味の薄いメンチカツ?)とチーズとピクルスとキムチが挟まっていた。なんとも微妙な味わいだった。ピクルスは日本のものより甘くてすっぱくないようだった。コーヒーを買うとクッキーがおまけでついてきたが、これは予想に反して甘くなかった。近くのテーブルでおっさんたちが何を食べるでもなく集まってワイワイしゃべっていた。風体からして近所のパーツ屋のプチ社長たちであろうと推測された。

 ロッテリアの近所には古くさいUFOキャッチャーがあって、中には「マシマロ」とかいうウサギのできそこないみたいなキャラクターの人形が入っていたが、だれもやっていなかった。この「マシマロ」というのは韓国で非常に売れているキャラクターらしく、あちこちで見かけたが、買ったり身に付けたりしている人は見たことがない。本当に流行ってるのか。

 南大門の近くの駅で降りて、タクシーに乗る。「ソウルタワー」と言っても通じず、「ナムサンパーク」と言うと「ナムサンタワ?」と聞いてきた。どうやらこのあたりでは「ナムサンタワ」というらしい。大声でしゃべる人だった。おっさんは他の運転手になにか大声で聞いてから車を走らせ始めた。「ジャパン?」「イエス」おっさんと我々の会話はこれだけである。いろいろ話したかったんだろうが言葉が通じないので仕方がない。しばらく山を登ったところにあるロープウェイの駅前でおろされた。あとはこれで登るらしい。

 ロープウェイが発進するまでしばらく待ったが、乗ってしまうと5分ぐらいでついた。乗っている間、韓国語と日本語と英語でアナウンスがあった。それによるとこのロープウェイは1967?年にできた韓国で一番古いものなのだそうだ。上にあがるとタワー、昔の烽火(のろし)の台のあと、売店(韓国ではどこでも酒を売っていて、ここでも当然売っていた)といったものがあった。烽火台からはソウル市街がよく見渡せた。ここは現在はデートスポットと化しているらしく、「forever love」だのハートマークだの二人の名前(たぶん)だのがぎっしりホワイトでかかれていた。タワーの営業は夜の1時までらしいから、夜になるとここはそういう客でにぎわうのだろう。今は朝なので観光客ばかりである。タワーの地下にはお化け屋敷などがあるらしかったが、ここには入らないことにして券を買い、中に入った。

 タワーは高いところにある上にそれ自体も高いので、非常に見晴らしが良かった。売店でテコンドー人形や変なメダルを売っていたが、高いので買わなかった。青柳は椅子にすわってじっとしていた。階段を上がると回転レストランがあった。説明に「回転するレストランがあり」とあったので、展望台自体がぐりぐりと回転するのかと思っていたのだがそうではなく、レストランの床がディスク状になっていてそれが回転するというだけだった。この店には入らなかった。

 タワーを降りて地下に行くと「3Dハクション大魔王」の上映とかをしていて激しく興味をそそられたが、見られなかった。残念である。

 ロープウェイの山頂の駅にはなぜかジェニーとセーラームーンのパチモン?らしきおもちゃが売られていた。ロープウェイで降りて、そこからは歩き、ミョンドンに行った。ここで青柳が靴や服を買うのにつきあった。

 夕方ダンキンドーナツに行く。味は日本と同じ。やっぱりミルクティーはなかった。やはり韓国にはミルクティーを飲むという文化そのものが存在しないらしい。(レモンティーは缶飲料であった。また、ティーパックはリプトンのを売っていた。茶と称するものもあったが、いわゆる「チャ」という植物を煎じたものではなく、人参茶とか麦茶とかだった。)

 その後ロッテ百貨店や地下街の眼鏡屋にもついていった。ロッテでは私は海苔を買った。眼鏡屋では私は何も買わなかったが、待っている間「ヘルシーオリゴ」というドリンクをくれたので飲んだ。ファイブミニみたいな外見で、味はオレンジ味でさわやかでうまかった。眼鏡ができるまでしばらくかかるということだったので、その間に飯を食いに出た。「部隊チゲ」の近くの焼肉屋に入る。肉に味がついておらず、塩の入ったごま油につけて食べる。野菜もあまりついておらず、それほどうまくはなかった。ここの売りは鉄板焼きのたれに漬けたカルビらしく、現地人はみんなそれを頼んでいて、大変うまそうなにおいがしていた。失敗したかなと思ったが、青柳は久しぶりに自分でも食べられるものがあって気に入っていたようである。この日はあまり食べなかった。私は足りなかったので水冷麺(むるねんみょん)を食べた。麺はそうめんみたいに細かったが、固い感触は同じだった。すっぱくてナシが入っていて肉の味がして、実にうまかった。腹の薬だと思って汁も飲んだ。帰ってオリンピック見て部屋のふろに入って23時ごろPCバンに行き、寝た。