大韓遠征記2002

2/16(土)

 夜中、がたがたとすごい音がして目がさめた。鎖をがちゃがちゃまわしているような音だ。外に出てみるとすでに別の町の明かりが見えていて、時間は朝の2時半だった。とするとさっきの音は錨をおろす音だったらしい。さすがに早いのでもう一回寝た。7時頃起きる。停船していたところは大きな岩がたくさんある場所で、大変きれいだった。食堂で洋食の朝食を取る。写真では目玉焼きだったのに実際にはゆで卵だったのが残念である。8時半にプサンに入港。テレビではカーリングをやっていた。税関のチェックがやっぱり非常に簡単で、こんなのでいいのかと不思議になる。8万円をウォンに変えると、大変な札束になった。税関の外に観光案内所があり、そこで日本語で「ホテルフェニックス」を予約することができた。ダブルのオンドル部屋で80000ウォンである。これに三人で泊まるから一人3000円かかっていない計算になる。

 町中の文字がことごとくハングル文字なのではじめかなり違和感があった。しかし、地名等は感じも並記してあったので助かった。また、トイレに困るかと思ったがわかりやすいところにたくさんあって困らなかった。

 町の車はみたことのないものばかりだった。みんな「H」のマークがついていたが、あれはやはり「現代(ひゅんだい)」の「H」なんだろうか。日本でよく見かける車と似ているが微妙にちがう。近くの駅から地下鉄に乗り、釜山駅に行く。自動販売機が、ボタンをおしてから金を入れる形式なのではじめ戸惑った。ちなみに、地下鉄は600ウォンである。京都の地下鉄が200円からなのを考えるとかなり安い。まちがえて反対向きのホームに入ってしまい、ホームが中で繋がっていないので駅員に合図したらすぐに了解して向こうに移してくれた。こういうことはよくあることらしい。改札は自動だが、人を遮る仕掛けがもっと頑丈で日本のより入りにくかった。

 地下鉄に乗るとキムチの汁をこぼしたのを放っておいたような、なんだか妙なにおいがした。(これはどこでもそうだったのだが、2日もすると何も感じなくなった。)釜山駅の前の自動販売機で甘酒みたいな缶ドリンクを飲み、あまりの甘ったるさに気持ち悪くなった。米の粒粒入りで、全部飲むのに難渋した。そこら中を迷彩服の若者がうろうろしていた。軍隊の休みで外出しているらしい。田口らはカップのコーヒーを買っていた。味はちょっと甘いが日本のカップの自販機とだいたい同じである。

 受付でセマウル号の予約をしようとしたが、話が通じなくて困った。困っていると親切な神大生が来て通訳してくれた。セマウル号は出発の1時間前にきて手続きをしないといけないので、明日乗るセマウル号の席を取ることはできないのだという。とにかく明日来ないといけないらしい。何日にセマウル号に乗るかあらかじめ決まっていれば日本で予約しておけたのだが、日韓共同きっぷを買う時まだ日程をきめていなくてオープンにしてもらったのでこういう面倒なことになった。もっとも、もしセマウル号がいっぱいでもムグンファ号やトンギル号に乗ればいいので、実はそんなに心配はない。

 釜山駅前にPC房(ぴーしーばん)があったので入ってみた。ここでメールをみたりしたかったのだが、日本語が表示できず、また掲示板に書き込もうとしてもエラーが出てうまく行かず、成果がなかった。他の客達はみんなネットゲームをしていた。それにしても1時間ほどで1000ウォンというのは安いと思う。

 近所のファミリーマートで精力剤(人参と鹿の絵が描いてあった。人参の味がして非常にまずかった)と薬菓(やっくゎ、油であげた花の形をした菓子。味は甘過ぎずまあまあ。ちょっとねっとりしている)を購入。地下鉄に戻りナンポドン(南甫洞)駅まで行き、ホテルフェニックスに向かう。

 ホテル周辺は非常に賑やかで、生活に困ることはなさそうだった。まずは昼食ということでチャガルチ市場(しじゃん)というところにいった。ここでは魚を買って上の店に行くと調理してくれ、その場で食べることができる。いか、あなご、ひらめといったものを刺身で食ったり(あなごの刺身というものが存在する!)いきなり昼間からマッコリやビールを飲みまくったりしたのですごい金がかかった。観光客がよく来るところなので注文には困らなかった。刺身は赤いみそにつけて、生ニンニクや唐辛子の切ったのと一緒にサンチュ(レタス)やエゴマ(シソによく似ているがもっとにおいが独特できつい)の葉に巻いて食べる。しょうゆとわさびもある。わさびが粉を練ったやつしかないと聞いていたので、持参したチューブのやつを使った。しかし私自身はみそで食べるのがうまかったのであまりしょうゆは使わなかった。キムチはまずかった。後の二人はエゴマやニンニクが気に入らなかったらしく食べなかったので、その辺は私が全部処理した。久しぶりにニンニクを食いまくったからかどんどん調子がよくなってきて、魚のあらで作ったメウンタン(辛いみそ汁)もうまいといって全部きれいに食ってしまった。青柳には辛すぎてつらかったようだ。

 すっかり酔っぱらってホテルに帰り、韓国語の放送でオリンピックのスキーなど見ているうちに3人とも眠ってしまった。「長野オリンピック銅メダリスト」を韓国語では「ナガノオリンピックドンメダリスト」ということがわかった。ちなみに金メダルは「キンメダル」銀メダルは「ウンメダル」である。金はキムジョンイルの「キム」、銀は「ケーウンスク」の「ウン」、銅は「ソンドンヨル」の「ドン」である。どうでもいいけど。

 15時頃起きだし、近所の国際市場というところをうろうろする。大変な雑踏だった。みんな何か食いながら歩いていた。女の子はたいてい2人3人と手を繋いで歩いていた。あれは一体なんなのだろうか。屋台が無闇にあった。するめやトッポッキ(赤いみそで煮たもち)、カステラみたいな食べ物、お好み焼きみたいな食べ物、さつまいもを揚げたもの、栗、ぎんなん、等等である。音楽テープの屋台もたくさんあった。また、マシュマロとかいう変なふわふわしたウサギ風キャラクターのぬいぐるみがやたらにあった。はやってるのか。あと、韓国の男はたいてい刈り上げが鋭い。途中コンビニで人参ガム、はちみつドリンク(瓶詰め)、ピーナッツドリンク(瓶詰め)、スジョンガ(缶詰め)を買う。ぶらぶらしてから何となく龍頭山(よんどさん)公園というところにいく。岡の上にあるので疲れた。ここには亀甲船で有名な李舜臣(いすんしん)の銅像がある。ここでポンチャックにあわせて叫び踊り狂う老人達を目撃する。ひまそうな人たちがその様子を階段に座って眺めていた。ここでスジョンガ(水晶菓)を飲む。ニッキ水と冷やし飴の合体したような飲み物で、やっぱりひたすら甘ったるくて辟易した。プサンタワーというのがここにあり、高いところが好きな我々も登ってみた。高さは京都タワーぐらいなのだが、高いところにあるので非常に見晴しがよかった。このタワーも東京タワーや京都タワーと同じくキッチュなもので溢れていた。例えばジジイの形をした手相占いマシン(でも胴体のテレビ画面には萌え系ギャルのイラストが出てきて脱力する)とか、覗くと「とってもおもしろい立体写真」が見られる機械とかである。タイトルは日本語でも書いてあったのだが、こんな感じである。「北朝鮮の人々の生活」「民族の誇り白頭山」「夢にまで見た金剛山」・・・500ウォンだったので「北朝鮮の人々の生活」を覗いてみた。なにやら悲壮な音楽とナレーションが聞こえはじめ、ばあさんがキムチをつけていたりする貧しい農家の生活風景が写し出された。最後のほうにボロボロの子供達が集まって焼き芋を食べているシーンが写し出されたが、こいつらの服は確かに破れめだらけだが布自体は別に汚いわけではなかったので、おそらくモデルを使っているにちがいないと推察された。ボロボロの服で貧乏を表現するのが、なんだかコントみたいでおかしい。タワーからは今朝のって来た船もよく見えた。おそらく今日の夜出航して下関に戻るのであろう。

 帰りに「プサンデパート」というところに行くが、非常にしょぼいただの雑居ビルだった。ここで青柳がもうプサンには何も見るところはないな、などと言っていた。私にとってはこういう間抜けな現象自体が面白いのだが、なかなかそういうことは理解されないようだ。ちょっとたとえが適切ではないかもしれないが、まずい食べ物に遭遇しても怒るより面白がるほうが精神的にも良いと思うんだがどうか。

 一旦部屋に戻って風呂に入る。20時頃ホテルの裏にある「ナンポドンサンゲタン」という店に行き、サンゲタンとビールをとる。こんな贅沢をしても10000ウォンである。サンゲタンは日本ではかなり高いものなのだが。ところでビールを飲む人は少なくて、たいていみんな焼酎だった。はじめに人参酒がでた。テーブルに生の唐辛子や野菜スティックとみそがあったのでつけてはかじっていたのだが、唐辛子が「当たり」でものすごく辛くて参った。サンゲタン自体は大変うまかった。デフォルトでは味が薄いので塩を入れるとちょうど良くなった。キムチはうまいのとそうでもないのが出た。

 食後一人でPCバンにいく。日本語が出なくて困っていると、店の人が日本語のフォントを入れてくれた。ここではじめて日本と連絡がついた。PCバンの使い方もだいぶわかってきた。隣の男はラーメンを食いながらネットゲームをしていた。

 PCバンを出てから、ゲーセンに入ってみたが日本と同じだった。せっかくだからSTRIKER 1945を一回やって出た。途中道端でイ・パクサのテープを見つけたので買う。手にとって眺めていたらおやじが「イバクサ。オリジナル!」と話し掛けてきた。海賊版じゃないという意味だったらしい。5000ウォン。二本組みのテープが500円だから安い。コンビニで梅ヨーグルトと蟹の形をした辛そうなスナック菓子を購入してから部屋に戻る。梅ヨーグルトは梅の味は全然しなかった。23時頃寝る。オンドルが熱くて何度も目がさめた。あとで気がついてみたら温度調整できるのだった。失敗した。